光回線を使っていても、時間帯によっては通信速度が遅くなってしまい、快適に使えないという経験をしたことがある人も多いでしょう。
そんな通信速度の遅れを解消してくれるのが、「IPv6(あいぴーぶいろく)」。特に人口の集中している都心部や、アクセスが集中する夜7時~10時ごろによく通信を行うという人は、回線をIPV6に切り替えるだけで劇的に速くなるんです。
新しい通信規格:IPV6とは?
IPV6は、「Internet Protocol(インターネット・プロトコル) Version6」の略。インターネット・プロトコルというのはインターネットに接続するためのルールブックのようなもので、IPV6は6代目ルールブックということです。
スマホやパソコン、WindowsやiOSなど、端末やOSが違っても同じように通信が行えるのは、ほとんどの端末・OSが共通のルールブックを使っているからなのです。しかしそうは言っても、時代によってルールが変化するのは当然のこと。
現在主流となっているのは「IPV4」ですが、インターネットの普及によりIPV4のままでは様々な問題が起き始めているため、次世代バージョンである「IPV6」が利用されるようになってきたのです。
IPV6誕生のきっかけはIPアドレスの不足
IVP6になって何が変わるのかというと、一番大きいのはIPアドレスの数が増えるという点。IPアドレスはインターネットを利用する上での住所のようなもので、現行のIPV4では「0~255までの数字(10進数)を4つ並べたもの」となっています。
そうすると、IVP4で作ることができるIPアドレスの数は、「255の4乗=約43億通り」。爆発的にインターネットが普及した現在では、スマホ1人1台は当たり前、それに加えてパソコンやタブレット、その他家電や自動車など様々な機器もインターネットに接続するようになり、43億ではとても足りない状態となってしまっているのです。
そんなIPアドレス不足を解消するために、IPV6ではIPアドレスが「4桁の16進数(数字0~9、アルファベットA~F)を8つ並べたもの」になっています。これは43億のさらに4乗、「約340澗(かん)通り」ものアドレスが作られる計算。
340澗個ものアドレスがあれば、世界中の人々全員に1兆個ずつIPアドレスを振り分けても、まだまだ余るというから驚きですね。
速度アップのカギはIPV6の「IPoE接続」
現在インターネットへの接続方式には、IPV4で使われている「PPPoE」方式と、IPV6で使える「IPoE」方式の2つがあります。従来のPPPoEでは、インターネットへ接続する過程で、必ず「網終端装置」という装置を経由する必要がありました。
具体的に以下のルートをたどります。
インターネットの接続方法
- 自宅
- NTT回線
- 網終端装置
- プロバイダ→インターネット
しかしこの網終端装置、NTTの規定によって、たとえプロバイダの契約人数が増えようとも、なかなか増設することが難しいのです。
そうなるとユーザーの多い都心部や、夜7時~10時頃の通信が集中する時間帯には、混雑を起こして通信速度が落ちてしまう結果に。高速道路に例えるなら、料金所の数が少なく、しかもETCに対応していない…というようなもの。
いくら回線で高速通信が行えても、網終端装置で足止めを食らってしまうのです。この仕組みを解消するのが、IPV6で利用されている「IPoE」方式。
IPoEは網終端装置を経由しないので速い
PPPoEでは網終端装置を経由しなくてはならないため、通信が集中すると通信速度の低下に繋がります。しかしIPoEは網終端装置を経由せず、以下のようなルートになります。
IPoEの接続方法
- 自宅
- NTT回線
- VNE事業者
- インターネット
現在プロバイダは数百社ありますが、全てをNTT回線とそのまま接続できるようにするには、管理が難しいので、あらかじめ選出された数社のみが、VNE事業者としてIPV6に対応できる仕組みになっています。
前述のように高速道路に例えるなら、料金所がたくさんある上に全てETC対応で素通りOK、という状態です。また、単純にIPV6はまだ利用者が少ないため、混雑そのものが起きにくいというのも「通信速度が上がる」と言われる理由の一つ。
VNE事業者
- NTTコミュニケーションズ
- BIGLOBE
- フリービット
- BBIX
- 日本ネットワークイネイブラー
- インターネットマルチフィード
- ASAHIネット
- アルテリアネットワークス
IPV6に切り替えたのに遅い?2つの原因
IPV6の「PPPoE接続」に設定されている
IPV6=IPoEだと思われがちですが、IPV6はPPPoEとIPoE、どちらの接続方式も(機能上は)利用することができます。
IPV4 | IPV6 | |
PPPoE | ○ | ○ |
IPoE | × | ○ |
つまり契約内容によっては、「PPPoE方式のIPV6だった」ということもあり得るわけです。前述のとおり、PPPoE方式では網終端装置での混雑が避けられないため、通信速度はIPV4を使っていた時と変わりません。
あくまでも、IPV6で速くなるのはIPoE方式を使って網終端装置での混雑を避けた場合のみ。契約内容が「IPV6 IPoE」になっているか、確認してみましょう。
サイト側がIPV6非対応のケース
IPV6の弱点は、IPV4との互換性がない点。現在はまだIPV4からIPV6への過渡期にあるため、IPV6非対応のサイトも多くあります。
IPV6非対応のサイトをIPV6接続で閲覧することはできないので、IPV6非対応サイトに接続するときは、これまでと同じIPV4での接続になってしまうのです。
「IPV6に切り替えたのに、遅いままだ!」と感じる人は、おそらくIPV6非対応のサイトに接続しようとしている可能性大。
IPV4にしか対応していないサイトに接続する場合には、接続速度が上がることはないのです。
「IPV4 over IPV6」で問題解決
通常ならばIPV4はPPPoE方式で網終端装置を経由しなければならないところ、IPV4通信でもIPV6と同じようにIPoE方式で網終端装置を迂回できるようにした技術が「IPV4 over IPV6」。
この技術により、IPV4にしか対応していないサイトに接続する場合でも、IPV6と同じように混雑を回避してスムーズな通信が行えるようになるのです。
IPV6を契約したりルーターを選んだりする際には、「IPV4 over IPV6」に対応しているかどうかも確認しましょう。
IPV6で通信を行うには
さて、IPV6について理解が深まったところで、次は「IPV6を利用するにはどうしたらいいのか?」について見ていきましょう。
最近ではIPV6の利用が標準装備となっているプロバイダやプランもあり、その場合は申込みや特別な手続きは不要です。
利用しているルーターがIPV6対応でさえあればOK。標準装備がされていない場合、使っているプロバイダによって多少手順は異なりますが、大まかには以下のようになります。
プロバイダがIPV6に対応しているか確認
まずは、利用している(しようと思っている)プロバイダがIPV6に対応しているかを、公式サイトや問い合わせ等で確認しましょう。契約プランによっても、IPV6接続サービスに申し込めるかどうかが異なるので、その点も要チェック。
プロバイダへIPV6接続のサービスを申し込む
プロバイダがIPV6に対応していることが確認できたら、IPV6接続サービスを申し込みましょう。
IPV6対応ルーターを準備する
IPV6対応のルーター、これがなければ始まりません。現在すでに使っているルーターがある場合は、IPV6に対応しているかどうか確認してください。
デバイスの設定をIPV6での通信にする
特に古い型のデバイスでは、初期設定でIPV6の通信をしないように設定されていることがあります。ここを通信可能にしておかないと、いくら契約やルーターをIPV6対応にしても意味がありません。
以上のステップを踏むことで、IPV6を利用してより快適にインターネットライフを送ることができます。
現時点でIPV6に対応しているかどうかを調べる方法
IPV6に対応しているかどうかを調べるためには、以下のページにアクセスして、継続テストしてみましょう。IPv6を利用しているかどうかを判定してくれます。
IPv6かどうか調べるサイト
「IPV6インターネットが速くなる理由」まとめ
「IPV6」は現在はまだ過渡期にあるため、サイトによって非対応だったりと、どんなものかが余計に分かりづらくなっています。
しかし一つ一つ紐解いていけば、そう難しい事はありません。光回線の速度低下に悩まされている人は、まずは今現在IPV6通信ができているのかどうかを確認し、対応できていないようならIPV6通信の契約を検討してみてください。