今や固定回線による通信の基盤となっている光回線。
そんな光回線に使われている「光ファイバー」ですが、なぜ光ファイバーを使うと高速通信が可能となるのでしょうか。
その理由は、光ファイバーの構造と光信号の仕組みにあります。この記事ではその光ファイバーの原理、伝送モード、材質の違いについて解説していきます。
光ファイバーとは?
従来の通信(固定電話やADSL)に使われていたのは、銅などの金属が材料の「メタルケーブル」。
それに対して、高純度のガラス繊維(またはプラスチック繊維)が使われているのが「光ファイバーケーブル」です。
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光ファイバーの中では電気信号ではなく、光信号によってデータが送受信されます。光信号は電気信号に比べて、大容量通信、そして高速通信が可能。
インターネットの光回線はもとより、医療用機器や様々な計測機器などにも利用されているのです。
光ファイバーの構造を解説
繊維にただ光を通しただけでは、当然ですが光は様々は方向に散ってしまい、それほど遠くまで届けることはできませんよね。
そこで、光ファイバーは「コア」と呼ばれる中心部分と、「クラッド」と呼ばれる外側部分の二重構造になっています。
光ファイバーの、正面・横それぞれの断面イメージ図がこちら。
コアとクラッドには屈折率の違いがあり、コアは屈折率が高く、クラッドは屈折率が低い素材。
コアに入った光はクラッドとの境界面で全反射を繰り返しながら、光ファイバーの中を進んでいくのです。
光信号は高スピードの光の点滅
インターネットのデータ通信に限らずデジタルデバイスでは、1と0を使った2進法が使われています。
電気信号の場合は、簡単に言えば電気が流れている状態が1、流れていない状態が0。
それと同じように、光信号では光を高速で点滅させて、光が点いている状態を1、点いていない状態を0として情報を伝える仕組みです。
よく「光信号は光だから、すごく速いんでしょ?」という声も耳にしますが、これは間違い。
光も電気も、そのもののスピードには大きな差はありません。
それではなぜ光信号を使った光回線のほうが速いのかと言えば、「光信号は電気信号に比べて1と0の切り替えが高速でできるから」というのが理由。
つまり、電気の変調よりも光の点滅のほうがスピードが速いんです。
具体的に言えば、電気信号は1秒間に約100億個の信号が送れるのに対し、光信号は1秒間に1兆個もの信号を送ることが可能。
そのため、光信号は電気信号に比べて、短時間でより大容量の通信を行うことができるのです。
光ファイバーは減衰性が低く長距離通信に向き
光ファイバーの速さの秘密は、光信号の仕組みだけではありません。速さを決定づける要因には、「減衰率の低さ」や「伝搬の安定性」も関係します。
いくら高速でデータを送っても、遠くまでは届かなかったり、ノイズに邪魔されたのでは高速通信は実現できませんからね。
光ファイバー・光信号の減衰率が低く安定して伝搬できるのには、主に2つの理由があります。
遠くに行くに連れて光が弱くなるのは、光が拡散してしまうのが理由。
しかし光ファイバーではコアの中で光を極力拡散させずに屈折させることで、より遠くまで届けることができる仕組みになっています。
光ファイバーに主に使われている「石英ガラス」は、電気を通しません。そのため、外部からの電磁波を受けにくいという特徴があります。
ノイズに邪魔されることがないので、安定して信号を送受信することができるのです。
上記のような特徴から、光ファイバーは従来のメタルケーブルに比べて、安定して長距離通信を行うことができるのです。
光ファイバーの材質について
素材による分類
光ファイバーと言えば「石英ガラス」が使われるのが一般的ですが、他の素材で作られた光ファイバーも存在します。
光回線の光通信で使われているのは、主に「石英ガラス」「プラスチック」「フッ化物ガラス」の3種。それぞれの特徴を、簡単に見てみましょう。
石英ガラス
光通信には最も多く使われている素材で、減衰率が低いので、長距離高速通信に利用されます。
プラスチック
コストが低く取り扱いも容易です。しかしガラスに比べると減衰率が高いので、近距離の通信向け。
フッ化物ガラス
フッ化ガラスは石英ガラスよりさらに減衰率が低いため、海底ケーブルなど超長距離の通信に用いられます。
このように、光ファイバーの素材を使い分けることで、より低価格かつ安定した通信が行えるサービスの提供ができている、というわけなんです。
光ファイバーの伝送方法による分類
光ファイバーには素材の他にも、伝送方法による種類の違いもあります。
その種類は、大きく分けて2つ。
「シングルモード」と「マルチモード」です。
シングルモード:長距離で安定して使える
シングルモードは直径が9.2μという超極細のコアで、単一のモード(光の経路)を使って通信を行う光ファイバー。
径が細いと光はより直線的に進むため、光の分散が小さくなる(=減衰率が低くなる)という特徴があります。
そのため、最大40kmの長距離の通信が可能。
ただし接合など取扱が難しい面があるため、接続がうまく言っていない場合は減衰率が大幅に高くなってしまうことも。
マルチモード:大容量通信が可能だか利用は数キロ圏内
マルチモードは50μ・62.5μの径が使われている光ファイバーの中を、複数のモードで伝送する方法。
シングルモードに比べて大容量の通信が可能な反面、反射回数が多いモードと少ないモードでは到達時間に差が出てしまう「モード分散」が大きいため、利用は数km程度の近距離に限られます。
まとめ
光ファイバーの速さの理由は、電気信号よりも圧倒的に情報量を伝えられる「光信号」にあります。
そして光信号をより効率的かつ低コストで伝搬できるように、様々な材質、そして伝搬方法が適材適所に使い分けられているというわけですね。
しかも通信のさらなる大容量化・高速化に向けて、光ファイバーそのものも次世代のものへと移り変わりつつあります。
例えば、クラッド内に複数のコアを配置する「マルチコアファイバー」。実用化が進めば、伝送容量は現在の100倍にもなると言われている技術です。
合わせて、メタルケーブルの仕組みを知っておくと光ファイバーの利点、欠点もわかるので、ぜひ読んでみてください。
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