現在、インターネットを利用するための固定回線には、「光回線」「ADSL」「CATV(ケーブルテレビ)」の3つがあります。それぞれスピードや初期費用、使える地域などに違いがあります。
ネット回線選びによってインターネットを快適に利用できるかが大きく変わってくるので、失敗しないようにしたいですよね。
ADSL・光回線・CATVの比較一覧
まずは、違いを一覧にしたものが以下です。
ADSL | 光回線 | CATV | |
使用ケーブル | 固定電話回線 (メタルケーブル) |
光回線 (光ファイバーケーブル) |
ケーブルテレビ放送回線 (光ハイブリッド) |
通信速度 | 5Mbps~50Mbps | 100Mbps~1Gbps (最大10Mbps) |
5Mbps~1Gbps |
通信の安定性 | 低い | 高い | 普通 |
費用 | 安い | 高い | 高い |
エリア | ほぼ全国をカバー | エリア外の地域もある | 地域限定 |
以上を踏まえた上で、ここからはそれぞれの違いについて深く掘り下げて見ていきましょう。
各種インターネットサービスの使用ケーブルの違い
それぞれの回線イメージを図にしてみました。
電話回線を利用した「ADSL」
ADSLは「Asymmetric Digital Subscriber Line(アシンメトリック・デジタル・サブスクライバー・ライン)」の略で、日本語では「非対称デジタル加入者線」。名前からはどんなものかイメージがつきづらいですね。
ADSLは、既存の電話回線(メタルケーブル)を利用してインターネット通信を行うサービスのこと。以前はNTTの固定電話回線を持っている人でなければ利用できないサービスでしたが、現在では固定電話回線がなくても加入することは可能です。
光ファイバーを使った「光回線」
光回線は別名FTTH「Fiber To The Home(ファイバー・トゥ・ザ・ホーム)」とも呼ばれています。直訳すれば、「光ファイバーを直接家に引き込む」ということですね。
「ケーブル」と言えばADSLのメタルケーブルのように銅などの金属を利用したものが一般的ですが、光ケーブルは金属ではなくガラス繊維でできた「光ファイバー」で作られているのが特徴。
さらに電気信号ではなく「光信号(光を点滅させて情報を伝達)」を使うことにより、ADSLよりも高速通信、かつ大容量通信ができるようになったのです。
放送回線を利用した「CATV(ケーブルテレビ)」
CATV(ケーブルテレビ)は、その名の通り有線のテレビ放送のこと。元々は電波が届きにくい地域において、直接ケーブルを家まで繋いでテレビが見られるようにするサービスでした。
しかしテレビ放送用の同軸ケーブルと光ケーブルを組み合わせることによって、テレビ放送と同じケーブルを使ってインターネットサービスを利用することも可能です。
圧倒的な速さを誇る光回線
回線を選ぶ上で重要な速さに焦点を当てて選ぶなら、やはり光回線一択。ADSLが1~50Mbpsなのに対して、光回線は平均で100Mbps~1Gbps、最近では、nuro光のように最大10Gbpsのプランまで登場しています。
よく「光が進むスピードは電気より速いから、光回線は速いんでしょ?」と勘違いされることもあるのですが、実際に光も電気も、そのもののスピード自体にそう大きな違いはありません。
それではなぜADSLに比べて光回線が高速なのかと言えば、「光信号は電気信号に比べて同じ時間で多くの情報を送ることができるから」なんです。
光信号と電気信号の違い
電気信号は電圧の強弱、そして変調(周波数や位相を変えること)によってデータのやり取りを行います。それに対して、光信号は光の点滅によってデータを送受信しますが、電圧を調整したり変調させたりするよりも、光を点滅させるほうが圧倒的に速いんです。
具体的には、電気信号は1秒間に100億個の信号、光信号は1秒間に1兆個。光信号は同じ時間でも、電気信号に比べて伝えられる情報量が多いので、結果的に通信速度が速くなるというわけなんですね。
CATVは「光ファイバー」ではなく「光ハイブリッド」
CATVでも、サービス名が「光なんとか」とか「なんとか光」になっているので、CATVでも光ファイバーを使っていることは間違いありません。
それなのに、CATVは光回線に比べて速度が遅いと言われるのはなぜなのか。CATVの場合、局から各戸付近の「変換器」までは光ファイバー、変換器から各戸まではテレビ放送にも使う同軸ケーブルが使われている光ハイブリッド形式だからなのです。
同軸ケーブル内では光信号ではなく電気信号に変換されますし、そもそもインターネット専用のケーブルではないため伝送効率も悪く、純粋な光ファイバーに比べると速度が出ないというわけです。
ADSLは通信の安定性が低い
ADSLの弱点は通信速度そのものだけではなく、通信の安定性の低さも挙げられます。ADSLの電気信号は減衰性が高いため、基地局から遠くなればなるほど不安定になるので、基地局から遠い地域では使い物にならないほど速度が落ちてしまうことも。
また、電磁波などのノイズに影響されやすいという特徴もあるため、安定した通信が難しいのです。また、CATVについても同様に、光ファイバーから先の同軸ケーブルはノイズを受けやすいため、通信が不安定になることがあります。その点、やはり安定性の面においても優れている光回線。
光信号は減衰性が低いため遠い場所まで安定して届く上に、ノイズに影響されにくく、速度が落ちにくいため快適にインターネットが使えることが特徴です。
費用が安いのは?月々の利用料と初期費用
よく言われるのが、「コストを抑えるならADSL、光回線やCATVは高い」ということ。これは正解でもあり、不正解でもあります。
基本的な月々の利用料だけで見れば、光回線やCATVに比べて、ADSLは平均的に1,000円~2,000円ほどコストが抑えられる傾向があります。ただし、ADSLは固定電話回線を持っていなかった場合、新たに電話加入権の購入(36,000円)や、電話線を引き込むための工事費用も必要。
月々の費用は抑えられても、初期費用で大きな出費が必要なこともあるのです。そしてもう一つ注目してほしいのが、各サービスの「セット割」。例えば、ADSLや光回線ならスマホ契約とのセット割、CATVならテレビ放送とのセット割などが一般的。
他のサービスとセットで契約すれば、例えば光回線でもADSLより安く使えたりすることもあるわけです。
利用エリアの問題
それぞれのメリットやデメリットについて解説していきましたが、地域によっては回線選択の余地がないこともあります。今後のサービスとして選ぶなら、これまでに書いたように圧倒的に光回線が高スペックでおすすめなのですが、残念ながら光回線には「エリア外の地域」というものが存在します。
数字上では光回線のエリアカバー率は96%を超えていると言われていますが、総務省の調査によると、実際は対応エリアとなっている市町村でも、利用できるのは中心部のみで山間部などは利用不可というケースも多くあります。
そんな光回線の隙間を埋めるために必要なのが、ADSLやCATVといった、山間部や僻地でも利用できるサービスなんですね。
ADSLは2025年を目処にサービス終了
これまではインターネット回線の選択肢の一つとなっていたADSLですが、2025年の固定電話回線廃止を目処に、サービスが終了する予定です。すでにどの事業者もADSLへの新規申し込みはできなくなっているので、今後新たにADSLを利用することはできません。現在ADSLを利用している人も、光回線やCATVへの乗り換えが必要となります。
「光回線、ADSL、CATVの違い」まとめ
今後の選択肢としておすすめするならば、やはり光回線。気になるコスト面も、スマホ契約とのセット割などで、とてもお得に利用することができるようになっています。
ADSLはすでに終了が決定しているサービスですし、光回線が使えるエリアなら光回線を選びましょう。ただしすでにCATVのテレビ放送を契約していたり、CATVでもFTTH方式を採用して光回線と同等の速度が期待できたりする場合には、CATVという選択肢も有りです。
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