キャリアの電波(W-CDMA、CDMA2000)の仕組み・違いをやさしく解説

現在日本で使われている3G通信には、形式が2つあることをご存知ですか?

docomo(ドコモ)・Softbank(ソフトバンク)で採用されている「W-CDMA」と、au(KDDI)で採用されている「CDMA2000」です。

格安SIMや格安スマホが一般的となった今、この2つの形式の違いによって、端末選びやSIM選びが複雑化しています。

楠リカ
選択を間違えると音声通話が使えないこともあるW-CDMAとCDMA2000の違いについて、くわしく解説しました。

CDMA(符号分割多元接続の略称)は電波に符号を付けてやり取りする方式のこと

W-CDMAやCDMA2000の違いについて説明する前に、「そもそもCDMAって何のこと?」という疑問を持つ人も多いでしょう。

CDMAとは、「Code Division Multiple Access(コード・ディビジョン・マルチプル・アクセス)」の略で、日本語にすると「符号分割多元接続」のこと。

日本語にしても何のことやらって感じですね。

とても簡単に説明すると、「電波一つ一つに符号をつけて、同時にたくさんの電波をやり取りできるようにしよう」という技術のこと。

 

宅配便に例えるなら、荷物一つ一つに名前や住所を書いた送り状をつけることで、同時にたくさんの荷物を引き受けたり届けたりすることができる…ってことです。

「W-CDMA」や「CDMA2000」というのは、要は運送会社による配送方法の違いのようなものだと思っておけばOKです。

 

W-CDMAを採用しているのはドコモとSoftbank

W-CDMAは、ドコモとSoftbankが3G(第3世代)通信に採用している通信方式。

NTTドコモとノキア、エリクソンなどの欧州のメーカーによって共同開発され、日本を初めとしてアメリカ、中国、韓国、台湾、欧州諸国、オーストラリアなどで広く利用されており、CDMA2000に比べて国際標準に近い形式となっています。

ドコモでは「FOMA」、Softbankでは「Softbank 3G」(当初はVGS(ボーダフォングローバルスタンダード))という名称でサービスを展開。

 

CDMA2000を採用しているのはau(KDDI)

CDMA2000は、au(KDDI)が3G(第3世代)通信に採用している通信形式です。

元々はアメリカのクアルコムが開発し、日本や南米・北米、韓国、中国、香港などで採用されていますが、世界的に見ればマイナーな規格

しかし3G以前の世代で「CDMA One」を採用していたメーカーやキャリアにとっては、技術の応用ができるため開発コストを抑えられるというメリットがありました。

日本では2002年から「CDMA 1x WIN」という名前でサービスが開始されています。

 

W-CDMAとCDMA2000の仕組みと原理の違い

W-CDMAの“W” とは「Wide band」、つまり周波数帯が広いことを意味しています。

W-CDMAは1つのチャンネルの広い周波数帯に、音声やデータ通信など様々な情報を混ぜて送受信を行うのに対し、CDMA2000では1つのチャンネルを区切り、それぞれに音声は音声、データはデータと分けて送受信を行います。

「どの荷物もまとめて広い道路で運んでしまおう」というのがW-CDMA。

「荷物ごとに道を替えて運ぼう」というのがCDMA2000です。

 

それでは、この送受信方法の違いが、具体的にはどういった違いを生むのでしょうか。

 

CDMA2000は音声通話とデータ通信の同時利用不可

ガラケー時代には気にならなかったデメリットですが、CDMA2000方式では音声通話とデータ通信が同時にできません。

auのスマホを使っていると、例えば「電話をしながら地図アプリで現在地を確認することができない」、などという経験がある人も多いのではないでしょうか。

CDMA2000では音声通話とデータ通信が別の帯域を通って送受信されるため、一方を受信中にもう一方を受信する…ということができないからなんです。

 

その点、W-CDMAを採用しているドコモやSoftbankでは、音声通話とデータ通信の同時利用が可能。

ただし、同時利用の場合は「データ通信量が多すぎて音声品質が悪くなる」ということも起こりやすいので注意が必要です。

楠リカ
ちなみに、現在ではauも「VoLTE(4G)」という新しい回線の利用によって、音声通話とデータ通信の同時利用が可能になっているんだよ。VoLTE非対応の端末では利用できないけどね。

 

格安スマホはau回線での使用に注意

VoLTEに対応している端末ならば大丈夫ですが、問題はVoLTE非対応の端末の場合。

VoLTE非対応の端末の場合、データ通信はLTE通信、音声通話は3G通信というふうに切り替えて使われます。

それの何が問題なのかというと、格安スマホの多くは世界的に見てマイナー規格であるCDMA2000に対応していないからです。

そのため、au系列の格安SIMを使っている場合、端末との組み合わせによっては音声通話ができなくなってしまうことも。

格安SIMの契約と端末の購入をセットで行う場合にはまず問題ありませんが、端末を自分で別に用意する場合には気をつけてください。

 

auの3G(CDMA2000)は2022年で終了

KDDIでは、2022年3月末をもって3G通信(CDMA2000方式のサービス)の終了が決定しました。

これによって、今までは問題なくau回線で使えていた端末でも、VoLTE非対応の場合は利用ができなくなります。

元々auで購入した端末も同様。これからau系列の格安SIMを利用予定の人は、必ずVoLTE対応の端末を選ぶようにしましょう。

 

まとめ:W-CDMAとCDMA2000の違いは多いので、特に格安スマホ選びには気を付けて

ガラケー時代にはさほど気にする必要のなかったW-CDMAとCDMA2000の違いが、キャリアの垣根を超えたSIMフリーの浸透によって予想外に重大な問題となりました。

特に格安SIM・格安スマホへの乗り換えに関しては、音声通話が使えないのは大きすぎるデメリットなので、SIM選び・端末選びはよく吟味してください。

ややこしいなと思う場合は、素直にSIM契約と端末の購入をセットで行いましょう。