性能の良さに定評のあるHTCのスマートフォン。HTCは世界で初めてAndroid端末を販売したメーカーでもあり、スマートフォン普及の立役者と言っても過言ではありません。
そんなHTCですが、現在のスマホ市場における世界シェアは1%以下。
HTC(エイチ・ティー・シー)とは?
HTC(HTC Corporation/宏達国際電子股份有限公司)は、台湾に本社を置くスマートフォンメーカー。じつは、世界で初めてのAndroid端末「HTC Dream」を販売した企業です。
Windowsを搭載したWindows MobileやWindows Phoneも手がけていましたが、日本ではやはり、「HT-03」などAndroid端末の販売から知名度・人気ともに高まりました。
2010年時点でのHTCのスマートフォンシェアは、世界第4位となり、スマートフォン市場でトップを狙える位置にまで食い込んでいます。
しかし近年ではHuaweiなど中国スマホメーカーの台頭も著しく、シェアは低迷。2018年には、Googleによってスマートフォン部門が部分的に買収されました。
HTCの事業ラインナップ
HTCのメイン事業といえばスマートフォンを思い浮かべる人が多いでしょうが、現在好調なのはVR事業です。
現在の事業展開
- スマートフォン
- タブレット
- アクセサリ
- VRヘッドマウントディスプレイ
- VRヘッドセット
日本国内では大手キャリアから販売されているスマートフォン端末を初めとして、SIMフリー端末も発売されています。
それに加えて、最先端技術が投入されたVR(バーチャル・リアリティ)ヘッドマウントディスプレイ「VIVE」も注目されていますね。
IDCの調査によると、VRヘッドヘッドマウントディスプレイについては特に高い評価を得ており、2018年第3四半期には、ケーブルタイプのVRヘッドセットの世界シェアは約21.3%。
スマホ事業では伸び悩んでいるHTCですが、VR関連事業では順調な伸びを見せています。
過去の事業展開
- Pocket PC
- スマートフォン(Windows Mobile/Windows Phone)
現在ではAndroid端末を主流に扱うHTCですが、過去には他社に先駆けて、いちはやくWindows搭載のPDA(手のひらサイズの携帯情報端末の総称)Pocket PCや、Windows Mobileの製造にも着手。
従来の携帯電話端末からPDA、そしてスマートフォン時代へと導いた陰の立役者は、間違いなくHTCでしょう。
HTCの世界シェアは1%以下
HTCのシェアは低迷していると書きましたが、具体的にはどのくらいのシェアがあるのでしょうか。Counterpoint社の調査データを見てみると、2018年のHTCのスマホシェアはランキング外。
パーセンテージにすると1%以下ということになります。スマホ市場全体の成長がストップしているとは言え、好調な伸びを見せる中国メーカーに比べると、勢いの無さは否定できません。
台湾でのシェアも低迷
台湾ではスマートフォンの一時代を築いたHTCですが、現在では台湾国内でのシェアも低迷。まず、2017年時点でのCheetah Global Labの調査記事を見てみると、HTCはAndroid端末の中では台湾国内トップのシェアを誇っています。
しかし2018年、NNAの調査記事によれば、台湾国内でのHTCのシェアは6.8%で第5位。同じく台湾メーカーであるASUSは1位のApple、2位のサムスンと大きな差はありませんが、HTCは逆転された上10%以上も差をつけられる結果に。
台湾でもOPPOなどの中国勢が参入してきたことで、さらに熾烈なシェア争いが起こっています。
インドに初めてAndroidスマホを導入したHTC
スマホの巨大市場を有するインド。ここ数年では、インドへの進出が成功したかどうかが世界シェアのランキングを大きく変えるほど、インドのスマホ市場はスマホメーカーにとって重要なポイントとなっています。
じつはそんなインドのスマホ市場に初めてAndroid端末を導入したのは、HTC。上でも紹介した2017年のCheetah Global Labの調査記事では、インドでのAndroid端末シェアは第3位となっており、インドにおけるアンドロイド端末人気の火付け役となりました。
しかし2018年には、XiaomiやVivo、OPPOなどの中国勢に抜かれてランキング外。インドではローエンド端末が人気なこともあり、そんなインド市場の需要を読みきれなかったHTCは、インド市場で惨敗してしまう結果となりました。
日本国内でのシェアは0.7%
HTCは2006年には日本法人を設立しており、日本国内でも長らく携帯端末を展開してきました。しかし現在、HTCのスマホの認知度はそう高くありません。MMD研究所の調査によると、日本国内で利用しているスマートフォンブランドがHTCだと答えた人は、全体のわずか0.7%。
日本は携帯端末シェアの約半数をiPhoneが占めていますが、そんなiPhoneを除いても、HTCのシェアは1.2%ほどしかありません。
元々HTCの端末は性能の良さに評判はあったものの、日本向けのローカライズに不足があったことや、大衆向けではなく一部のこだわりを持ったユーザー向けというイメージが強かったのも、シェアが低い原因の一つでしょう。
HTCのスマホの特徴は「確かな性能」
HTCのスマホの特徴を挙げるとするならば、やはり一番にくるのは高品質かつ高性能だという点ですね。HTC公式サイトでも、「人気よりも性能を重視する」と言い切っています。
そして基本的な機能の充実だけではなく、HTC独自の独創的な技術やデザインにも注目してみましょう。例えば、「HTC U11」から搭載された「エッジセンス」機能は、スマホを“握る”動作でアプリの呼び出しやカメラの起動などの操作ができるようになっています。
さらに「HTC U12+」に搭載の「エッジセンス2」では、さらに細かく操作が行えるようになった他、本体のカラーリングに中の基盤が透けて見えるスケルトンタイプも登場。
他社のスマホにはない独自の提案で、HTCというブランドの持つ底力を感じさせますね。
HTCの注目しておくべきポイント
大手企業へも製品提供する確かな技術力
性能の良さに定評のあるHTCですが、その評判は確かな実力に裏打ちされています。HTCは世界初のAndroid端末「HTC Dream」を作り出しただけではなく、Windowsを搭載したPDA、Windows Mobileなども手がけてきました。
また、コンパックやソニー・エリクソンの「Xperia X1」など、大手メーカーの製品にもHTCが開発したものが多くあります。
現在でもVR市場では大きく成長を続けていることを見ても、HTCの技術力は衰えていないことを感じさせますね。
残念ながらスマートフォン部門の一部はGoogleに買収されてしまいましたが、スマートフォン部門自体は存続して、今後も自社ブランドを作り続けていくとのことなので、ぜひスマートフォン市場での復活も期待したいです。
HTCの「POWER TO GIVE」
私が個人的に面白いと思ったのは、HTCの「POWER TO GIVE」という取り組みです。POWER TO GIVEは、私達一人ひとりのスマートフォンの演算能力を集めて、スパコンにしてしまおうというもの。
POWER TO GIVEでは、専用のアプリをインストールした世界中のスマホから、少しずつ処理能力を借りられる仕組みになっています。
そうして得られたスパコン並みの演算能力によって、がんやアルツハイマーなど病気の治療法発見に貢献するとしています。
スマホ1台の演算能力はたいしたことがなくても、それが何百、何千、何万と合わさることでスパコン並みの演算能力を手に入れる…もう漫画の中だけの話ではないんですね。
VR事業に注力
スマホ事業の一部をGoogleの売却したHTCですが、スマホの開発自体は継続していくとしています。しかし、残されたスマホ部門はVR部門に統合。
VR部門が好調な伸びを見せているので、今後はスマホ事業よりもVR事業に注力したいというのがメーカーの方針となる可能性が高いですね。
現在は世界のスマホ市場自体が頭打ちとなっており、シェア上位のメーカーも多くが前年比マイナスとなっている中、VR事業への転換は英断だとも言えます。
先見の明を持ってPDAやスマホ事業にいちはやく参入したHTCなので、スマホ事業からVR事業への転換も、これから新しい時代を作り上げていく土台となることを期待したいですね。
まとめ
HTCはスマホ業界の中では伝統のあるメーカーですし、製品も高品質・高性能。基本的なスペックや安定感だけで言えば、十分に世界で戦える力を持ったメーカーです。
もしかすると今後はスマホ事業以外がメインとなっていくのかもしれませんが、携帯情報端末の一時代を築いたメーカーであることは、多くの人の心に残るでしょう。